【工場で出会ったクセ強人間】その② 作業エリアは自分の国境線。侵入を絶対許さない男の話

みなさん、どうも工場テンショクくんです。

工場で長く働いていると、

「この人はどういう人生を歩んできたんだろう」

と思わずにはいられない人に出会います。

この男性Oさん(仮称)の話題は前回のTさん同様にいくつもあります。

今回はOさんの

「自分の作業エリアを1ミリでも超えられることを絶対に許さなかった話」

をしようと思います。

このOさん、とにかく

「自分の作業エリアを1ミリでも越えられることを絶対に許さない」

タイプの人でした。

床に引かれた線は、Oさんにとってただの作業エリアじゃないです。

作業エリアのラインは国境線。

手が少し入れば領空侵犯。

足を踏み入れれば領土侵犯。

しかも、他人が自分のエリアに入ることは絶対に許さないのに、自分は普通に他人のエリアへ入って先行作業をするんですよね。

正直かなり面倒くさい人だったんですけど、こういう人って工場にめっちゃいます。

ただ、こういった人でも

「学べる教訓はあったな」

と思える部分がありました。

そのあたりも含めて、今回はお話しさせていただけたらと思います。

本人や勤務先が特定されないよう、名前は仮称にし、一部の表現や設定を変更しています

そもそもOさんってどんな人物?

このOさんは、僕が同じラインで満了までいた期間工の人の話になります。

どういった人物だったのか、今でも鮮明に覚えているので書き出してみると

  • 歳は40代後半。
  • 体格はお腹ぽっこり、正直太い。動きはそんなに速くない。
  • 自分の持ち場に他の人が入ってくると露骨に不機嫌になる。
  • 後ろの工程の人が先行作業をするとブチギレる。
  • ちょっとしたことでも社員にクレーム。
  • 風俗が大好き。数少ない女性社員につきまとう。
  • 女の子の見た目や体型にはめちゃくちゃ厳しい。

これでもまだまだ言い足りないくらいですがこういった人でした。

工場で働いたことがある人なら、

「ああ、こういう人いたな」

と一人や二人、顔が浮かぶんじゃないでしょうか。

僕が言われたことは自分の作業エリアに関するクレームくらいでした。

だから最初は

「自分の持ち場に責任を持っている、真面目な人なのかな」

くらいに思っていました。

でも、一緒に働いているうちに少しずつ分かってきたんです。

Oさんはルールに厳しいというより、

自分以外の人にだけ厳しい人でした。

自分のことは、きれいに棚の上へ置くというか。

そしてある日、その性格が完全に爆発する事件が起きたんですよ。

象徴的な事件:他人の先行作業は絶対に許さない

さきほど先行作業という単語が出てきたと思います。

この「先行作業」を簡単に説明すると工場のライン作業では、自分が担当する工程によって作業する場所がある程度決められています。

製品が自分のエリアまで流れてきたら、決められた作業をして次の工程へ送る。

これが基本です。

ただ、自分の作業を少しでも早く終わらせたい人は、製品が自分の持ち場へ来る前に、前工程側まで行って作業を始めることがあります。

これが先行作業です。

この先行作業は褒められたものではなくて、作業者同士が揉める原因にもなりやすいです。

Oさんの後の工程を担当していた人はせっかちな人でした。

その日も自分の担当する箇所の作業をOさんの作業が終わったのを確認してから急いでOさんの作業エリアに侵入して作業していました。

それに不満を感じていたOさんが

「おまえ毎回入ってくんなよ!」

と怒ったんですよ。

後工程の人も引かなかったのでマジの言い合いになりました。

ちなみにこういった揉め事が発生した場合、僕がいる班では生産に影響しそうならリリーフが作業を代行します。

そのうえで当事者同士を引き離して、上の人間を交えて話し合いを行います。

このときも二人は一度ラインから外され、それぞれの言い分を聞くことになりました。

まず、Oさんの主張はこうです。

「先行作業で自分のエリアに入ってこられると、煽られているように感じるからやめてほしい」

一方、後工程の人は、

「Oさんの作業が終わっているなら、少しくらい入っても問題ないと思っていた」

「自分の作業を、できるだけ早く終わらせておきたかった」

と話していました。

ここまでの話だけ聞くと、Oさんが被害者に見えるんですよね。

自分の持ち場へ毎回入ってこられるから当然「煽られている」と感じます。

なので嫌だと思う気持ちは当然ですよね。

ところが、後工程の人へさらに話を聞いていくと、別の事実が出てきました。

「先行作業ならOさんもよくやっているのになぜ自分だけ言われないといけないのか」

「Oさんがこちらに遅れてくることも多いから、その遅れを挽回するのに疲れるし、できる時に早く終わらせて体力を温存したかった」

こういった主張だったわけですね。

そして周りの作業員にも確認してみた所、それは事実だったわけです。

つまり先行作業をOさんもやってたんですよ。

自分も先行作業をやっている。

ただ自分が同じ様に先行作業をやられると許せない。

かなりダブスタな話だったんですよ。

しかも、自分の作業が遅れることで後工程に影響が出ていることには知らんぷり。

結局話し合いの結果、2人は工程を離されることで決着しました。

これでOさんの国境問題は、物理的に解決したわけです。

じつはライン作業でのこういった国境問題、めっっっっちゃくちゃ多いです。

だからこそ、作業エリアに関しては色んなルールが設けられてたりします。

さて今回の話、ここから得られる教訓はいくつかあります。

教訓①:他人に求めるなら、まず自分が守る

この出来事から僕が学んだ1個目の教訓は、

「他人に求めるルールは、まず自分が守る」

ということです。

先に言っておくと、今回Oさんの言っていることって正しいし、間違ってないんですよ。

工場で作業エリアが決められていることには、ちゃんと意味があります。

同じ場所に複数の作業者が入れば、体や工具がぶつかる可能性があります。

もし工具が当たって怪我をしてしまったら。

もし身体がぶつかって転んでしまったら。

こういった安全のリスクは極力排除しないとダメなんです。

だからこそライン作業の場合、作業エリアは決められていることが多いです。

また先行作業って前工程の人を煽ることになるし、不具合がかなり発生しやすくなるんですよ。

車のあおり運転と一緒でお前作業遅いから早くしろって無言の圧力に感じる人はいるんですよ。

で、焦ってしまうことでミスが増加しちゃって品質に影響しちゃうことってあるんですよ。

あと作業って決められた締め付け作業の順番があるんですが、先行作業で出来るところだけしちゃうといつもと順番が違いますよね?

順番が変われば、ボルトの締め忘れなど不具合がめっちゃ発生しやすくなるんですよ。

だから、

「自分のエリアへ極力入ってほしくない」

「先行作業しないで欲しい」

という主張自体は正しいんですよ。

でも、自分も同じように他人のエリアへ入っていたら、誰も納得しないじゃないですか。

自分がやる先行作業には理由がある。

でも、他人がやる先行作業はルール違反。

これでは、どれだけ強く怒ったところで説得力はありません。

これ、仕事だけでなく、普段の生活でも意外とあると思うんですよ。

自分が遅れたときは、理由があれば

「事情があったから仕方ない」

と思うのに、他人が遅れたら理由があっても

「時間くらい守れよ」

と思ってしまうじゃないですか。

自分の事情は全部分かっていますが、相手の事情は見えないですしね。

だから、どうしても自分にだけ甘くなりやすいんですよね。

人に何かを求めるときは、一度、

「自分は本当にできているか」

と考えてみることって、めっちゃ大事なんだなとこの出来事から強く思いました。

あとこれができるだけで、言葉の説得力も周りからの信頼も全然違ってくるんじゃないかな、と。

だからこそ

「他人に求めるならまず自分が守る」

これを徹底しなければいけないな、という教訓になりました。

教訓②:正しさは、伝え方をよく考える

2個目の教訓は、

「正しさは、伝え方をよく考える」

ということです。

Oさんの

「自分の作業エリアへ勝手に入ってほしくない」

「先行作業をされると煽られているように感じる」

という気持ち自体は、間違いではないし、正しい感情なんですよ。

ただ、自分の中で不満が積み重なった結果、出てきた言葉が

「おまえ、毎回入ってくんなよ!」

だったので、普通に喧嘩になりました。

もし最初の段階で、

「先行作業で入られると急かされているように感じるから、一声かけてほしい」

と自分の気持ちを正しく伝えていたらどうなっていたでしょうか。

その人にちゃんと伝えれる関係性を築けていたら。

もし社員から伝えてもらっていたら。

もしかしたらあそこまで大きな言い合いにはなっていなかったかもしれません。

でも最初から怒りをぶつけたことで、後工程の人からは

「いきなりなんやねん、ふざけんな」

としかならなかったんですよ。

本当は理由のある話なのに、伝え方のせいで、正しく届かなくなったんですよね。

これ、僕はすごくもったいないなと思ったんですよ。

僕も仕事をしていて、

「こっちのほうが正しい」

と思う場面はあります。

たぶんみなさんもそういう場面って絶対にあるじゃないですか。

でも、正しいからって何を言ってもいいわけじゃないですよね。

相手に理解してもらいたいなら、なぜそうしてほしいのかを説明して、言い方も考えないといけないですよね。

怒鳴るより、理由を一言添えたほうが、結局は早く伝わりますし。

なので僕はこの出来事から伝え方には注意するようにしています。

それに感情に身を任せて言い合いをして、生産まで止めかけたくないですからね。

教訓③:自分で引いた人生の境界線を超える

そして最後の教訓は、

「自分で引いた人生の境界線を超える」

ということです。

ここからは工場の話とは逸れるというか、少し話が大きくなるんですが、Oさんを見ていて思ったことがあります。

僕も知らないうちに、自分の周りへ線を引いているなって。

「これは僕の仕事じゃない」

「自分には関係ない」

「未経験だからできない」

「今さら人生を変えるのは無理」

こうやって自分が引いた線の内側にいれば、大きな失敗はしないかもしれません。

誰かに踏み込まれて、嫌な思いをすることも減ると思います。

でも、誰も入れないようにしてしまうと、大きくチャンスを運んでくれる人まで入ってこれないじゃないですか。

そのうち自分自身も、線の外へ怖くて出られなくなります。

精神的な引きこもりってやつですよね。

でも新しい仕事も、新しい出会いも、自分を変えるきっかけも、だいたいは自分で引いた線の向こう側にあるんですよね。

僕自身も32歳で転職を繰り返し、借金が200万円あった頃は、

「今さら人生を変えるなんて無理だろう」

とあれこれ理由をつけて勝手に線を引いていました。

でも、その勇気をもって自分で引いた線を越えて未経験の工場へ入ったことで、少しずつ生活が変わりました。

もちろん、他人との境界線を勝手に越えていいという話じゃないです。

他人が決めた境界線は、きちんと尊重する。

そのうえで、自分の境界線に関しては

「自分には無理」

と決めつけるのではなく、常に自分の定めた境界線を少し越えてみることがすごい大事なんじゃないかな、と。

そうやって人生の境界線を少しずつ超えてエリアを広げていかないと人間性の成長に繋がらないんだろうなと感じました。

これが今回学んだ最後の教訓でした。

まとめ

ちなみにOさんはその後も働き続け、契約満了まで工場に在籍していました。

ただ、僕が一緒に働いていた間は、ずっと

「作業エリアにかなりうるさい人」かつ「自分は良い」

というスタンスのままでしたけどね。

ただ今回の出来事から僕は

  • 他人に守ってほしいルールは、まず自分が守る。
  • 正しいことを伝えるときほど、理由と言い方を考える。
  • 他人との境界線は尊重する、けど自分で決めた限界は超えていく。

この3つをOさんから学ばせて貰いました。

工場って、こういう強烈な人と何時間も隣り合わせで働くこともある場所なので、正直こういうことはあるにはあります。

工場では同じ動きが多いので動線が被る場合、やっぱりイライラの原因になって揉めやすいですから。

ただ、こういう気づきがあるのも工場勤務の面白いところですよね。

僕自身、自分で決めつけた人生の境界線は少しずつ越えていこうと思っています。

こうやって情報発信のためにブログをしているのもその一環ですし、自分がこうしていきたいという目標もあるので。

未経験の仕事でも、やったことのない挑戦でも一歩踏み出してみることって大事ですよね。

なのであなたも自分の人生だから、

自分が勝手に決めた境界線はどんどん越えていきましょう

ただ……もしあなたが放流された野生のOさんに出会ってしまったら……

作業エリアだけは絶対に越えないようにしましょう。

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